交通事故治療：病院から整骨院への転院・併用について徹底解説
最終更新日 2025年12月5日
交通事故に遭われた後、多くの方が整形外科などの病院に通院されます。しかし、「病院の治療だけでは不安」「もっと頻繁に施術を受けたい」と感じる方も少なくありません。
そこでよくあるご相談が、「病院から整骨院への転院はできるのか？」「病院と整骨院を併用することは可能なのか？」というものです。
この記事では、これらの疑問について、交通事故治療における病院と整骨院の役割の違い、それぞれのメリット・デメリット、そして適切な保険適用について詳しく解説します。
目次
病院から整骨院への転院・併用は可能？
結論から言うと、交通事故治療において、病院から整骨院への転院、または病院と整骨院の併用はどちらも可能です。多くの交通事故被害者の方が、症状の早期改善や通院の利便性を考慮し、これらの選択肢を選んでいます。
交通事故に遭ったら、自覚症状がなくても必ずすぐに医療機関（整形外科など）を受診し、正確な診断を受けることが何よりも重要です。後から症状が出た場合でも、事故との因果関係を証明するためには、初期の診断書が不可欠となります。
大切なのは、ご自身の症状や状況に合わせて最適な治療方法を選択することです。その選択にあたっては、整骨院と整形外科の通院頻度とポイントを理解しておくことが重要になります。
病院での交通事故治療に不満を感じるケース
病院での治療は、交通事故後の初期診断や重症な症状の治療には不可欠ですが、以下のような点で不満を感じる方もいらっしゃいます。
- 湿布や痛み止めなどの処方のみで、根本的な症状の改善が感じられない
- 診療時間が短く、十分に時間をかけて診てもらえないと感じる
- 仕事や家事などで平日の診療時間に合わせるのが難しい
- リハビリテーションの機会が少なく、手技による施術を希望している
- 医師とのコミュニケーションが不足していると感じ、治療方針に不安がある
このような場合、整骨院での施術を検討することで、よりご自身のニーズに合った治療を受けることが可能になります。
整骨院への通院は転院だけではない：併用という選択肢
上記のような理由で整骨院での治療を検討する場合でも、必ずしも病院から完全に転院する必要はありません。むしろ、病院での治療と並行して、整骨院に通院する「併用」が、多くの交通事故被害者にとって最も効果的な選択肢となることが多いです。
病院での診断や検査は継続しつつ、整骨院で手技による専門的なアプローチを受けることで、治療効果を最大限に高めることが期待できます。これにより、症状の早期改善や後遺症の防止にもつながります。併用することで、多角的なアプローチで症状に働きかけることができ、回復を早めるだけでなく、よりきめ細やかなケアを受けることが可能になります。
交通事故治療における病院の役割：診断と医学的管理
交通事故治療において、病院（特に整形外科）は、その医学的な専門性から非常に重要な役割を果たします。整骨院との併用を考える上でも、病院の役割を正しく理解しておくことが不可欠です。
病院での診断の重要性：事故との因果関係を証明する
症状の診断は医師のみが行える医療行為です。交通事故で負った怪我が、実際に事故によって引き起こされたものなのか（因果関係）を医学的に証明するためには、医師による正確な診断が不可欠となります。
レントゲン、MRI、CTなどの画像検査や、医師による詳細な診察を通して、客観的な診断が下されます。この診断は、診断書として発行され、保険会社への治療費請求や、将来的に症状が残ってしまった場合の後遺障害認定の手続きにおいて、決定的に重要な役割を果たします。
特に、後遺障害の認定を受けるためには、医師による医学的な診断書と、症状の一貫性・連続性を示す通院記録が必須となります。
病院に通院する主なメリット
- 医師による正確な診断と、病名・症状の確定
- 客観的な画像検査（レントゲン、MRI、CTなど）による内部状態の把握
- 診断書や後遺障害診断書の発行
- 痛み止め、湿布薬などの薬の処方
- 必要に応じた手術や、より高度な医療処置の実施
- 定期的な経過観察と治療方針の調整
これらは、整骨院では提供できない、病院ならではの重要な機能です。
整骨院での交通事故治療：手技による症状の改善
整骨院では、柔道整復師という国家資格を持つ施術者が、手技療法を中心とした施術を行います。骨折や脱臼、捻挫、打撲などの外傷に対して、筋肉や関節の調整、身体の歪みを整えることで、痛みの緩和や機能回復を目指します。例えば、交通事故で多いむちうちのような症状に対しては、整骨院での具体的なむちうち施術内容を知っておくことで、より安心して治療を受けることができるでしょう。
整骨院に通院する主なメリット
- 一人ひとりの症状に合わせた手技による丁寧な施術（マッサージ、整体、骨盤矯正、ストレッチなど）
- 痛みの緩和や関節可動域の改善に特化したアプローチ
- 比較的遅い時間まで営業している場所が多く、仕事帰りや休日にも通いやすい
- 病院と併用することで、より効果的な治療サイクルが期待できる
- 精神的なケアや日常生活でのアドバイスなど、患者に寄り添ったサポート
整骨院は、病院での診断を補完し、身体の機能回復と痛みの軽減に貢献する重要な役割を担います。
病院と整骨院の役割比較表
| 項目 | 病院（整形外科など） | 整骨院 |
|---|---|---|
| 専門性 | 医学的診断、画像検査、薬処方、手術 | 柔道整復術による手技療法、リハビリ |
| 対応症状 | 骨折、脱臼、診断を要する全般的な外傷 | 捻挫、打撲、挫傷、むちうちなどの急性・亜急性の外傷 |
| 保険適用 | 健康保険、自賠責保険、任意保険など | 自賠責保険、任意保険（医師の同意が推奨） |
| 診断書 | 発行可能（賠償請求、後遺障害に必須） | 発行不可（施術証明書は発行可能） |
| 強み | 客観的な診断、重症対応、法的証明 | 痛みの緩和、機能回復、手技による丁寧なケア |
この表からもわかるように、それぞれの専門性を理解し、症状に応じて適切に使い分ける、または併用することが、交通事故治療を円滑に進める上で非常に重要です。
整骨院で施術を受ける際の重要な注意点と保険会社との連携
整骨院での施術は非常に有効ですが、交通事故治療として保険を適用し、トラブルなく進めるためには、いくつかの重要な注意点があります。これらを怠ると、治療費が自己負担になったり、補償が受けられなくなる可能性もあるため、必ず確認しましょう。
整骨院通院時の必須確認事項と連携の重要性
- 必ず病院にも通院し、医師の診断を受け続けること：整骨院では医師のような診断書の発行や、医学的な検査ができません。保険請求や後遺障害認定の手続きには、医師による診断書と定期的な診察記録が必須です。症状の経過を医師に報告し、連携を取りながら治療を進めましょう。
- 整骨院に通院する前に、ご自身の保険会社（または相手方の保険会社）に連絡し、整骨院への通院が可能か確認すること：保険会社によっては、整骨院への通院を認めない場合や、治療費・慰謝料の支払いを渋るケースがあります。特に、整骨院を併用した場合の慰謝料計算については事前に確認し、医師の同意を得ている場合は、その旨を保険会社に伝えることで話がスムーズに進みやすいです。保険会社とのやり取りで困ったケースについては、こちらの記事も参考になります。
- 整骨院での施術内容や頻度を定期的に医師に報告し、連携を取ることが望ましい：病院と整骨院が連携することで、医師は患者様の症状の変化を総合的に把握でき、より適切な治療方針を立てることができます。可能であれば、整骨院の先生から医師への情報共有や、医師から整骨院への指示書の発行を依頼することも有効です。
- 領収書は必ず保管しておくこと：治療費の請求に必要なため、整骨院で発行された領収書は大切に保管しておきましょう。一括対応の場合でも、念のため保管しておくことをお勧めします。
整骨院への通院を保険適用とするためには、医師の同意（口頭での承諾や紹介状）が非常に重要です。保険会社は、医師の指示に基づく治療であるかどうかを重視します。もし医師が整骨院への通院を認めない場合は、保険適用外となるリスクがあるため、必ず医師に相談し、同意を得るように努めましょう。
また、保険会社とのやり取りで不安がある場合は、交通事故専門の弁護士に相談することをおすすめします。弁護士は、保険会社との交渉において被害者の権利を最大限に守ってくれます。
交通事故治療と保険について：適用される保険と手続き
交通事故被害者の治療費やその他の損害は、主に自賠責保険や任意保険が適用されるケースが大半です。これらの保険を適切に利用するためには、その種類と手続きの流れを理解しておくことが重要です。交通事故治療で利用できる保険の種類と内容について、より詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。
自賠責保険とは：被害者救済のための強制保険
自賠責保険は、すべての自動車（原動機付自転車を含む）に加入が義務付けられている「強制保険」です。交通事故の被害者救済を主な目的としており、対人賠償に限定して、最低限の補償を確保するものです。治療費、慰謝料、休業損害などが補償されますが、補償額には法律で定められた上限（支払い限度額）があります。
任意保険とは：自賠責保険を補完する保険
任意保険は、自賠責保険でカバーしきれない部分を補償する保険で、加入は任意です。対人賠償保険、対物賠償保険、車両保険、人身傷害保険など、様々な種類があり、保険会社によって内容が異なります。自賠責保険の支払い限度額を超える損害賠償請求を行う場合や、物損事故の場合などに必要となります。加入している保険会社や契約内容によって、利用できる補償が大きく変わるため、ご自身の保険内容を事前に確認しておくことが大切です。
保険請求の流れ：事故から治療終了まで
- 警察への届け出：交通事故が発生したら、被害の大小に関わらず必ず警察に届け出てください。事故証明書の発行に必要です。
- 病院での受診：速やかに整形外科などの病院を受診し、医師の診断を受け、診断書を作成してもらいます。
- 保険会社への連絡：加害者側の保険会社（またはご自身の保険会社）に事故の状況を連絡し、今後の手続きについて確認します。この際、整骨院への通院を検討している旨も合わせて伝えておきましょう。
- 治療開始：医師の診断に基づき、治療を開始します。整骨院に通院する場合は、必ず事前に保険会社に連絡し、同意を得てから通院を開始しましょう。
- 治療費の請求：治療費は、保険会社から医療機関や整骨院に直接支払われる「一括対応」となるケースが一般的ですが、被害者側が一旦立て替えて後日保険会社に請求する場合もあります。
- 症状固定：症状が改善しきらない状態で、これ以上治療を継続しても改善が見込めないと医師が判断した状態を「症状固定」と言います。この時点で治療は終了となります。症状固定は、その後の後遺障害認定や慰謝料計算に大きく影響するため、医師とよく相談し、慎重に判断することが重要です。
交通事故の慰謝料は、治療期間や通院日数によって変動します。適切な慰謝料を受け取るためには、症状が改善するまで中断なく、適切な頻度で通院を続けることが非常に重要です。自己判断で通院を中断したり、治療期間が短すぎると、本来受け取れるはずの慰謝料が減額されてしまう可能性があります。また、保険会社から治療の終了を打診された場合でも、ご自身の症状を考慮し、医師と相談の上で治療継続の必要性を主張することが大切です。
後遺障害が残ってしまった場合：適切な補償を求めるために
適切な治療を受けても症状が改善せず、将来にわたって身体に残る障害（後遺症）が確定した場合は、後遺障害等級認定の申請を検討しましょう。後遺障害等級認定を受けることで、後遺障害慰謝料や逸失利益（事故がなければ将来得られたであろう収入）などの補償を受けることができます。
後遺障害等級認定とは：障害の程度を明確にする制度
後遺障害等級認定とは、交通事故によって負った障害の程度を、自賠責保険の基準に基づき1級から14級までの等級で認定する制度です。数字が小さいほど重い障害とされ、認定された等級に応じて、支払われる後遺障害慰謝料や逸失利益の金額が大きく変動します。
後遺障害等級認定の手続きと弁護士の活用
後遺障害等級認定の手続きは非常に複雑であり、医学的・法的知識が必要となるため、ご自身で進めるのは困難な場合が多いです。そのため、弁護士に相談することをおすすめします。後遺障害が残った場合の慰謝料請求について、詳細はこちらの記事でご確認いただけます。
弁護士は、必要な診断書や各種資料の準備、適切な後遺障害診断書の作成に関するアドバイス、申請手続きの代行、そして認定された等級に基づいた保険会社との交渉など、幅広いサポートを提供してくれます。これにより、被害者の方が適正な等級認定と、それに伴う適切な補償を受けられる可能性が高まります。
交通事故問題に強い弁護士に相談するメリット
交通事故問題に強い弁護士の選び方と相談メリットについて、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。
交通事故の被害に遭われた場合は、弁護士に相談することで、以下のような多岐にわたるメリットがあります。
- 適切な慰謝料・損害賠償の請求：保険会社から提示される賠償金は、多くの場合、保険会社独自の基準（任意保険基準）に基づいています。弁護士に依頼することで、裁判基準（弁護士基準）という最も高額な基準で慰謝料や損害賠償を請求できる可能性が高まります。
- 保険会社との交渉代行：保険会社との煩雑で専門的な交渉を全て弁護士に任せることができます。これにより、精神的な負担が大幅に軽減され、治療に専念できる環境が整います。
- 後遺障害等級認定の手続きサポート：複雑な後遺障害等級認定の手続きを弁護士が全面的にサポートすることで、適切な等級認定を受けられる可能性が格段に高まります。
- 法的アドバイスの提供：交通事故に関する様々な法的疑問や不安に対して、専門家である弁護士から的確なアドバイスを受けることができます。
- 示談交渉のサポート：示談交渉を被害者にとって最も有利に進めるための専門的なサポートを受けることができます。
- 訴訟対応：もし示談交渉が決裂した場合でも、訴訟への移行など、次のステップへと円滑に対応してくれます。
注意：本記事は一般的な情報を提供するものであり、個々の状況には異なる要素が含まれる場合があります。具体的な対応については、医師、弁護士、保険会社などの専門家にご相談ください。
