交通事故紛争処理センターの主なメリットと活用方法
最終更新日 2024年9月25日
交通事故が発生すれば、相手の保険会社と示談も行う事になります。
その示談がスムーズに進まない時などは、弁護士に相談するケースが多いです。しかし弁護士に依頼すれば、もちろんお金もかかります。人によっては、あまり事を荒立てたくない事もあるでしょう。
その場合は、交通事故紛争処理センターという方法もあるのです。ただし処理センターは、誰でも利用できる訳ではありません。利用条件もありますので、注意が必要です。
目次
交通事故紛争処理センターの利用条件と主な役割
交通事故紛争処理センターを利用できる条件
交通事故紛争処理センターは、全国に事業所がある公益財団法人が運営していて、和解に関するあっせんや審査などを行ってくれるのです。
ただ冒頭でも触れた通り、処理センターは利用条件もあります。下記のような状況では利用できませんから、注意が必要です。
- 自転車と歩行者の交通事故
- 自転車と自転車の事故
- 自分が契約中の保険会社との費用支払いに関するトラブル
- 後遺障害の等級認定
その他にも、下記のような状態ですと利用不可能です。
- 調停や訴訟が行われている
- 他の紛争機関での手続きが進んでいる
- 被害者は怪我を治療している最中
- センター外で相談し、一旦は和解が成立した
- 後遺障害の認定の申請中、もしくは異議申し立ての最中
ただし上記の3点目ですが、症状固定の状態になれば利用する事はできます。
症状固定とは、「これ以上病院で治療しても、症状は良くならない」状態です。また上記5点目ですが、等級が認定された後に処理センターを利用する事はできます。
その他にも、加害者が任意保険に加入していなかったり、加害者加入の共済によっては利用できない事もあります。ただし相手が同意した時は利用できる事もあるので、そこは状況次第です。
交通事故紛争処理センターは何をしてくれるか
その処理センターでは何を行ってくれるかというと、下記の3点になります。
- 和解に関するあっせん
- 審査
- 法律相談
まず上記の1つ目ですが、そもそも加害者との話し合いしても、なかなか結論が出ない事があります。その際、お互いが示談で和解できるように、センターは第三者の立場からアドバイスしてくれるのです。
相談内容によっては、実現性がある和解案を提案してもらう事もできます。
ですが、話し合いでは和解が難しいケースもあるのです。そこで裁判所のように判決を下すような審査を行います。まずは加害者と被害者の両方から話を聞き、審査会を開くのです。その際過去の判例なども参考にして、一番良いと思われる裁定を下す訳です。
また処理センターには、専門の弁護士もいます。その弁護士に、法律に関する質問や相談をする事もできるのです。
なお上記のサポートは、いずれも全て無料になります。ただし交通費などは自己負担です。
交通事故紛争処理センターに依頼する主なメリットとは
話し合いの期間を短縮できる交通事故紛争処理センター
その処理センターを利用するメリットは、下記の通りです。
- 無料
- 解決がスピーディーになる
- 妥当な内容で解決しやすい
- 保険会社はセンターの判断に拘束されるようになる
上述の2つ目ですが、そもそも被害者と加害者が話し合いをしても、平行線をたどってしまう事があります。
両者が長々とそれぞれ主張するものの、一向に結論がまとまらないケースもよくあるのです。それこそ1年ぐらい話し合いを続けても、決着が付かない事があります。
ですが上記でも少々触れた通り、処理センターには弁護士も常駐しているのです。自社の間に入って話をまとめてくれますから、比較的短期で決着を付けやすくなります。
適切な数字で話をまとめてくれる交通事故紛争処理センター
それと2者での話し合いを試みても、数字に関してもめてしまうケースがよくあります。
加害者の保険会社が提示してきた慰謝料が安すぎたり、過失割合の数字が妥当でないという話になる事もよくあります。どちらも数字で譲らなければ、話し合いも長期化してしまうでしょう。
その点処理センターの弁護士は、裁判所基準で数字を判断してくれるのです。過去の事例などを確認し、慰謝料や過失割合の数字が妥当になるよう配慮してくれます。適正な金額で話し合いがまとまりやすいのも、処理センターのメリットの1つです。
裁定によってセンターを拘束してくれる交通事故紛争処理センター
そして3つ目ですが、センターを通じて示談を行えば、いずれはセンターが判断を下します。加害者側の保険会社に対しても、裁定を下してくれるのです。
何らかの裁定が出た時には、保険会社はその内容に従う必要があります。それで保険会社を拘束する事もできるのです。
拘束されていない状態ですと、保険会社は被害者にとって不利な条件を色々提示してきます。
賠償金が安くなってしまい、泣き寝入りに近い状態になってしまう事もよくあるのですが、センターが金額に関する裁定を下していれば話は別です。保険会社は裁定に従う必要があるので、一方的に不利な条件が提示されるのを防ぐこともできます。
処理センターのデメリットと法律事務所への相談
処理センターのデメリットと活用方法
ただし処理センターには、下記のようなデメリットもあります。
- 必ずしも相談者の味方になってくれるとは限らない
- 弁護士は変更できない
- 無保険事故では利用できない
- 状況によっては時間がかかる
上記の1つ目ですが、センターはあくまでも中立的な機関になります。第三者の立場からアドバイスしてもらう事は可能ですが、その内容も客観的な意見にとどまる事もあります。
また処理センターの弁護士は、自分が選べる訳ではありません。法律事務所などを探すのと異なり、別の弁護士に変える事もできないのです。それと加害者が保険に加入していないと、利用できません。あくまでも任意保険などに加入しているのが前提になります。
上記の4点目は上述の話と矛盾するようですが、そもそも交通事故にも色々なパターンがあります。大事故ですと、かえって弁護士に相談する方がスピーディーな事もあります。
以上の点を踏まえると、メリットばかりではありません。あくまでも無料で気軽に相談できる窓口として、活用してみると良いでしょう。
処理センターを利用するのが難しい時は法律事務所も検討
それと冒頭でも少々触れた通り、処理センターには利用条件もあります。相手の加入保険によっては、利用するのは厳しい事もあるのです。誰でも利用できるとは限らない点は、注意を要するでしょう。
条件的に厳しい時には、むしろ弁護士に依頼する方が良い事もあります。確かに弁護士に依頼するのは、費用はかかります。しかし弁護士特約を活用すれば、300万円を上限に費用が支払われます。かえって事務所に相談する方が早い事もありますし、検討してみると良いでしょう。
まとめ
交通事故紛争処理センターは無料ですし、気軽に利用できるメリットはあります。
面倒な状況になるのは避けたい時などは、検討してみる価値はあるでしょう。ただ色々な利用条件もあるので、メリットばかりではありません。人によっては、やや物足りないと感じている事もあります。
センターでの解決が難しそうな時は、法律事務所への依頼も検討してみる価値はあります。特約などに加入しているなら、相談してみると良いでしょう。