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    交通事故で聴力障害になった場合に後遺障害等級よりも逸失利益が争点になる理由

    2022.05.25
    交通事故で聴力障害になった場合に後遺障害等級よりも逸失利益が争点になる理由

    最終更新日 2024年9月11日

    事故に遭い強い衝撃を受けると、神経系統の異常が生じ、耳が聞こえづらくなったり、不快な音が聞こえてくる事もあります。

    人によっては、相手の発言を聞き取るのが難しくなってしまう事もあります。聴力障害の場合、逸失利益は話がまとまらないケースもあるので、注意が必要です。

    聴力障害が問題になりそうな場合は弁護士に相談しながら手続きを進めていくのがおすすめです。

    交通事故での聴力障害の症状とその認定等級

    聴力障害はどのような症状があるか

    聴力障害とは、音を伝えるための外耳・中耳、音を感じ取るための内耳などに何らかの異常があるために、耳が聞こえにくい・聞こえない状態です。
    具体的な症状としては次のような症状があります。

    • 耳鳴り
    • 高い音/低い音が聞き取りづらい
    • 雑音があると音が聞こえない
    • ふらつきがする
    • 体調によって聴力が変化する

    耳鳴りは、目まいとの相関関係もあります。三半規管の障害があればめまいが起こるからです。
    交通事故で頭部に大きな衝撃が加わると、耳周辺の器官にダメージが生じ、その影響で目まいを伴う事もあります。

    交通事故による聴力障害は後遺障害認定されるのか?

    聴力障害がある場合、後遺障害認定がされる可能性があります。詳細は次のとおりです。

    両耳に聴力障害がある場合

    障害内容等級
    両耳の聴力をまったく失ったもの第4級3号
    両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの第6級3号
    1耳の聴力をまったく失い、他耳の聴力が40㎝以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの第6級4号
    両耳の聴力が40㎝以上の距離では、普通の話声を解することができない程度になったもの第7級2号
    1耳の聴力をまったく失い、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの第7級3号
    両耳の聴力が1m以上の距離では、普通の話声を解することができない程度になったもの第9級7号
    1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの第9級8号
    両耳の聴力が1m以上の距離では、普通の話声を解することが困難である程度になったもの第10級5号
    両耳の聴力が1m以上の距離では小声を解することができない程度になったもの第11級5号

    1耳に聴力障害がある場合

    障害内容等級
    1耳の聴力をまったく失ったもの第9級9号
    1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの第10級6号
    1耳の聴力が40㎝以上の距離では、普通の話声を解することができない程度になったもの第11級6号
    1耳の聴力が1m以上の距離では小声を解することができない程度になったもの第14級3号

    距離など数値の基準はあるものの、それらは全て医療記録から判断されます。
    そのため、医師にどのように症状を伝えるかが非常に重要であり、それは症状が出た早いうちから意識する必要があります。

    交通事故での聴力障害の認定基準と逸失利益について

    聴力障害に対する2つの検査

    耳鳴りなど耳の不調が気になれば、すぐに耳鼻科を受診しましょう。

    耳鼻科で行われ、聴覚障害の等級認定に関わる聴力検査は複数ありますが、ここでは2つご紹介します。

    標準純音聴力検査(測定)

    聴力検査の中で基礎的かつ重要な検査です。周波数と音の大きさを変化させながら、音を正常に聞き取ることができるかを確認します。
    また同時に、聞こえ方に異常がある場合に聞こえづらい音の周波数により大まかにどの器官に異常があるかを絞り込むことができます。

    語音聴力検査(測定)

    特定の言葉が聞き取れるかどうかを検査するものです。「ア」とか「イ」といった検査語音がどの程度の音の大きさだと何%正しく聞こえるかを調べるもので、感音性難聴にあたるかどうかを判断できます。

    検査の結果と認定等級

    耳鼻科での聴力検査によって、聴力障害が医学的に証明できる時には、前述した症状の程度に応じ、後遺障害等級の認定がされます。

    しかし、症状固定時にそうした症状があるとしても、事故直後には症状がなかった(治療途中から突然症状が現れた)という場合は、事故との因果関係が否定されることがあり得ます。
    例えば事故が発生してから1ヶ月ぐらいは左耳で耳鳴りが発生していたものの、2ヶ月目には左耳の音は皆無になり、右耳から耳鳴りするような場合も同様です。

    そのため、事故直後から医師には適切に症状を伝え、それを記録に残してもらう必要があります。

    聴力障害とその逸失利益

    聴力障害を理由に後遺障害が認定された場合には、逸失利益の賠償もなされます。
    しかし、聴力障害が労働能力にどのように影響するかがわかりづらい場合、逸失利益の金額が大幅に減額されることもあり得ます。つまり、耳が聞こえづらいとしても、単独作業や視覚だけでできる仕事である場合には、逸失利益が認められづらい傾向にあるのです。

    聴力障害の主な注意点と対策

    聴力障害の主な2つの注意点

    上述の聴力障害に関する注意点は、主に2つあります。

    まず診療科については、普通の耳鼻科ではなく神経耳鼻科が望ましいです。交通事故の場合の聴覚障害は、神経の異常が原因であることがほとんどだからです。

    また、繰り返しになりますが、少しでも違和感があれば事故直後から早期に通院し、記録に残すということを強く意識してください。

    聴力障害の主な対策

    聴力障害の対策は、下記の通りです。

    • 交通事故に詳しい病院を選ぶ
    • 弁護士に相談
    • 交通事故に詳しい弁護士が望ましい

    聴力障害の後遺障害も基本的には書類だけで判断されます。そのため、その書面に適切な内容が記載されているかが非常に重要です。

    特に聴力障害はそれほど多い症例ではないため、弁護士選びも重要です。あまり交通事故案件を扱ったことのない弁護士は等級認定の基準を知らず,記録化などのサポートが乏しくなるほか、逸失利益の交渉なども不得手なことも多いです。

    そのため、交通事故案件の実績がある法律事務所で相談すると良いでしょう。

    まとめ

    聴覚障害は辛いにもかかわらず、客観的には分かりづらい非常に難しい症状です。後遺障害等級の認定をとって適切な賠償を受けるために、少しでも早く適切な弁護士に相談してみると良いでしょう。

    記事監修

    弁護士 渡邉貴士

    弁護士 渡邉貴士
    大阪弁護士会所属

    経歴:
    京都大学法学部卒業
    京都大学法科大学院修了

    趣味:
    プロ野球、温泉、音楽(ミスターチルドレンが好きです)

    実績:
    弁護士登録直後より交通事故案件に注力。中でもケガをした患者様の案件に特化しており、人身事故の相談件数は年間100件を超える。
    これまで整骨院や損保代理店での社内研修も多数実施して、連携をとって交通事故患者様のサポートを行う。