交通事故の自賠責と任意保険の違いとは?
最終更新日 2024年9月11日
車を運転している方々は、たいてい何らかの保険に加入しています。
運転手によっては無加入の事もありますが、基本的には自賠責もしくは任意保険に加入しているのです。
ただ、その2種類の保険についてあまり分かっていない方も多いです。両者は、交通事故で補償される範囲や過失割合などの違いがあるのです。
そこで今回は任意保険と自賠責の違いに関してまとめましたので、参考にしてみて下さい。
目次
任意保険と自賠責の補償範囲や金額などの違い
強制加入になる自賠責とそうでない任意保険
運転免許を取りますと、ほぼ確実に自賠責に入ることになるのです。いわゆる強制加入の保険になっているからです。
ちなみに自賠責保険には、罰則もあります。車に乗るのであれば、その保険には必ず加入する義務があり、無加入ですと1年以下の懲役か50万円以下の罰金になってしまうのです。
そして人によっては任意保険にも加入しているのですが、自賠責のような強制力はありません。入るかどうかは本人の意思に委ねられ、加入する保険会社も選ぶ事ができます。
物損事故も補償される任意保険と補償されない自賠責
ところで交通事故は、もちろん人身だけではありません。物損事故もあります。車がお店などに衝突してしまい、店舗は派手に壊れてしまったものの、怪我人はゼロというパターンもあるでしょう。その物損事故は、自賠責の補償対象にはなりません。
自賠責で補償されるのは、あくまでも人身事故に限られるのです。ですから被害者の慰謝料や治療費などは、自賠責保険で支払われます。しかし車の修理代などは、自賠責では支払われないのです。あくまでも人身限定という事になります。
それに対して任意保険の場合は、もっと広い範囲がカバーされるのです。もちろん保険会社による審査もありますが、物損事故でも保険会社からお金はおります。交通事故によりお怪我をされた場合、病院(整形外科)のドクターの許可があれば整骨院との併用の治療も認められております。加害者側の保険会社も整形外科のお医者さんによる整骨院の通院許可を重要視してくる傾向にあります。ただ、そこさえしっかりと認められれば、整骨院での施術費や慰謝料を相手方の保険会社に出してもらえることは可能となります。相手方の保険会社が自賠責保険の窓口をになってきています。
任意保険と自賠責は補償される金額が異なる
また自賠責保険には限度額があります。その具体的な金額は、下記の通りです。
治療費や入院交通費など | 最大120万円 |
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後遺障害の慰謝料 | 最大4,000万円 |
死亡事故の損害 | 3,000万円 |
自賠責は、あくまでも最低限の補償内容になっていますから、死亡事故でも3,000万円が上限になるのです。しかし被害者としては、それでは足りない事もあるでしょう。ですから、多くの方は任意保険に加入しているのです。
なお任意保険による支払い額は、一応は無制限ではあります。しかし任意保険の会社は、金額を交渉してくる事も多いです。
示談代行や過失割合などの違いと任意保険に加入する目的
任意保険には示談代行や弁護士特約がある
交通事故で負傷した被害者は、しばしば加害者と示談交渉しています。慰謝料の金額に関する交渉をしているのですが、任意保険に加入していれば交渉を代行してもらう事も可能なのです。
示談交渉の代行は、本来は弁護士の仕事ではあります。しかし肝心の慰謝料を支払うのは、加害者の任意保険会社になりますから、保険会社は示談交渉の代行も可能なのです。自賠責には、その代行サービスはありません。自賠責に加入している被害者本人が、交渉しなければなりません。
それと任意保険には弁護士特約があります。弁護士に依頼すればお金もかかりますが、その特約を利用すれば最大300万円は保険金がおりるのです。しかし自賠責には弁護士特約はありません。
過失相殺の数字が異なる任意保険と自賠責
以上の点を考慮すると、自賠責よりは任意保険の方が良いと思われるかもしれません。
しかし過失割合は例外なのです。
というのも自賠責の場合は、過失割合が70%以下であれば、慰謝料が減額される事はありません。70%以上でも、大幅に慰謝料が減額される事はないのです。
しかし任意保険の場合は、20%などの過失割合でも減額されてしまいます。まして70%ともなると、慰謝料は7割ほど減ってしまうのです。つまり任意保険は過失相殺の数字が大きくなっているのです。
自賠責では足りない部分を補う為に任意保険に加入
ただ過失割合を考慮しても、やはり任意保険の方が自賠責よりも手厚い補償内容になっています。
そもそも任意保険は、自賠責では足りない部分をカバーする為に加入する事になるのです。事故によっては自己破産に追い込まれてしまう可能性もあるので、そのリスクを低くする為に任意保険に加入している方が多いです。
例えば交通事故で本来支払われるべき慰謝料は、70万円だとします。しかし自賠責では30万円ぐらいしか支払われない事も多いです。任意保険に加入していないと、加害者としては残り40万円を自腹で支払うのですが、当然それが難しいこともあるでしょう。
そのような事態に備えて、任意保険に加入しておく訳です。
自賠責への保険金請求の流れ
自賠責保険へのお金の請求と必要書類
では任意保険ではなく自賠責で保険金が支払われる手続きの流れはどうなるかというと、基本的には4段階になります。
- 賠償金などを請求
- 自賠責から調査会社にデータが流れる
- 調査事務所による確認作業が行われる
- 保険金が決まる
上記の1段階目ですが、加害者が加入している自賠責にお金を請求します。決して被害者の自賠責ではありませんから、注意が必要です。ですから被害者としては加害者が加入している保険会社を確認する必要がありますが、その方法は2つあります。
1つ目は、加害者の車にある自賠責証明書です。その書類を見れば、どこの会社か分かります。
2つ目は自動車安全運転センターが発行してくれる交通事故証明書です。その証明書にも、保険会社の情報は書かれています。
ちなみに相手の自賠責にお金を請求する時は、色々な書類が必要です。
- 事故証明書
- 事故発生状況報告書
- 診療報酬などの明細
- 請求する本人の印鑑証明
上記の他にも、色々な書類を提出する事になります。
決定された金額が自賠責に通知される
お金を請求された自賠責の保険会社は、具体的な金額を決定する為に、事故に関して色々確認しなければなりません。その確認作業は、保険会社が行う訳ではないのです。
実際の調査作業は、調査事務所が行う事になります。ですから保険会社としては、調査に必要なデータを事務所に流します。
そして事務所は調査を行うのですが、その際に当事者にヒアリングする事もあれば、病院に確認する事もあります。
確認作業が一通り完了したら、具体的な金額も決定されるのです。最終決定された金額は、事務所から保険会社に伝達されます。もちろん請求した被害者本人にも、その具体的な金額は通知されるのです。
自賠責にお金を請求する大まかな流れは上記の通りですが、もしも不明点や不安点があるなら、法律事務所にも相談してみると良いでしょう。弁護士なら交通事故の手続きに関してサポートしてくれますし、検討してみる価値はあります。
まとめ
ですから自賠責と任意保険には、色々な違いはあります。総じて、補償内容に大きな違いがあるのです。やはり任意保険の方が、補償内容は比較的手厚いです。
自賠責では足りない分を、任意保険で補うイメージになります。任意保険に加入していない時は、相手の自賠責に直接お金を請求する形になります。求められる書類は少々多いですが、支払いは比較的早いです。
何か不明点があれば、弁護士にも相談してみると良いでしょう。