無保険事故の加害者が自己破産!賠償金は請求可能か
最終更新日 2024年9月11日
交通事故の相手は、必ずしも保険に加入しているとは限りません。
いわゆる無保険の人物もいるのです。しかも事故の状況は多彩なもので、加害者によっては自己破産してしまう事があります。
その際は慰謝料や治療費を支払ってもらうのは難しいのではないかと思われるかもしれません。実際、確かに難しい事もあります。
しかし自己破産は全てが免責対象になる訳ではありませんし、それこそケースバイケースです。
目次
無保険の人物が自己破産すると賠償金は免責になるのか
無保険の人物が自己破産すると差し押さえは困難なのか
無保険には2つのパターンがあって、自賠責のみ加入している加害者もいれば、全く何も保険に加入している人物もいるのです。
任意保険に加入していないと、支払われる慰謝料は安くなってしまうケースも多々ありますから、注意が必要です。
どうしても相手が支払ってくれそうもない時は、差し押さえなどで対処する事になります。相手の住宅を競売にかけたりして、財産の強制執行をするのです。
しかし加害者が自己破産をすると、免責になってしまう可能性があります。
2人乗り運転の同乗者が自己破産で免責になった実例
どういう状況で免責になったかと言うと、過去に2人乗りバイクの同乗者に賠償金を請求した実例があるのです。
運転手はAという人物で、飲酒運転していました。赤信号で走り、相手の車と衝突してしまったのです。
その車には、Bという人物も乗っていました。Bという人物に賠償金を請求したケースがあるのですが、最終的にその人物は免責になったのです。
上記のBの何が問題かと言うと、Aは飲酒運転を控えるべきだと伝えていなかった恐れがありました。それはBにも過失があるとも言えるので、お金を請求した訳です。しかしBは破産して、賠償金の支払いを免れたのです。
ですから相手が自己破産していれば、確かに免責されてしまう可能性はあります。上記の事故は、その一例と言えるでしょう。
自己破産したものの免責にならなかった事故の実例
ところが自己破産しても、交通事故の加害者は免責にならないケースもあります。
原付バイクと歩行者の交通事故でしたが、自動車側が自己破産しました。上述の2人バイクの例と違って、賠償金の支払いは命じられたのです。
その事故の場合、運転手には様々な問題点がありました。具体的には下記の通りです。
- 歩行者優先の道路での事故だった
- 原付バイク側のスピード違反
- 薄暗い時間帯だったのにライトを点灯していなかった
- 前と左右の安全確認を怠っていた
これらの問題点は、やや悪質であると判断された形になります。たとえ自己破産しているとしても、慰謝料は支払う義務があるという判決が下されました。
ですから自己破産すれば、必ずしも交通事故の慰謝料の支払いを免れる訳ではありません。それこそ事故の状況次第なのです。
重大な過失や悪意があれば自己破産していても請求できる
悪意がある時や重大な過失がある場合は自己破産の免責対象外
破産を行えば免責になるとは限らないのですが、それも条件があるからです。確かに自己破産すれば、慰謝料や借金などは免責にはなります。しかし悪質な状態の時は、その限りではありません。
法律を確認しますと、「悪意で加えた不法行為」などは免責の対象外になります。保険金目的のひき逃げ事故などは、明らかな悪意があるでしょう。そのような極端な事故の実例も、ごく稀にあるのです。
また重大な過失による生命身体に対する不法行為も、免責の対象外になります。ほぼ故意に相当する程度の注意義務を怠っていた時などは、免責の対象外になるのです。飲酒運転や無免許運転なども、免責の対象外に該当します。
上述の原付バイクの場合、ライトは点灯していませんし、歩行者優先の道で事故を起こしていた訳です。やや過失の程度が大きいと判断され、免責の対象外と判断された形になります。
なぜ自己破産した同乗者は免責になったか
上述の2人乗りバイクですが、実はBという人物の落ち度はそれほど大きくないと判断されたのです。自己破産の免責対象に相当すると認められた訳ですが、その理由は下記の通りです。
- Aの酔い具合は危険運転に相当するレベルだと、Bは認識していなかった
- Aは無免許運転である事を、Bは認識していなかった
- Aは停車するべきだと、Bは繰り返し制止していた
これらの点が考慮され、Bの過失はそこまで重たくないと判断された結果、最終的には免責になりました。
この辺りは、特に明確な基準がある訳ではありません。裁判で決まる訳ですが、全体的にケースバイケースで判決が下る傾向があります。
相手が自己破産してきた時の対処法
自己破産で免責になった時は自分が加入している保健の特約を確認
では上記の2人乗りバイクのBのように、免責になってしまった時の対処法なのですが、主な方法は2つあります。
まず1つ目は、被害者本人が加入している保険です。
保険会社によっては特約があって、自分が被害者でも補償される事もあります。上記のようにBから支払ってもらうのは難しい時は、代わりに保険会社に支払ってもらう事も、一応可能なのです。
1つ注意すべきなのは、上記のBのような状況になったからといって、保険会社がその特約を教えてくれるとは限りません。加入している本人が、自分でその特約を見つける必要があります。
ですからBのような状況になった時は、被害者としては保険会社に相談する形になるでしょう。
自己破産で免責になった時に政府保障で対応
それと政府保障事業という手段もあるのです。
ひき逃げなどでよく活用される手段です。ひき逃げ事故ですと、加害者が行方不明になっている訳ですから、慰謝料も支払ってもらう事ができません。その救済策の1つとして、政府保障があるのです。
ちなみにその補償は、多くの金額が支払われる訳ではありません。自賠責とほぼ同じぐらいの補償になります。それでも支払われないよりは良いので、検討してみると良いでしょう。
加害者が無保険で自己破産した時は弁護士に相談
結局は、相手が無保険で自己破産してしまった時の結果は、それこそケースバイケースです。被害者1人では、それを判断するのはとても難しいです。
その場合、やはり法律事務所に相談してみると良いでしょう。交通事故に詳しい弁護士であれば、アドバイスしてくれる事もあります。弁護士に依頼する時は費用もかかりますが、弁護士特約を活用できれば、依頼費用も支払われるのです。何らかの保険に加入しているなら、検討してみると良いでしょう。
そもそも裁判になった時に相手と示談交渉するハードルは、とても高いです。被害者1人で交渉するのは大変ですし、弁護士への相談を考えてみる方が良いでしょう。
交通事故の加害者が自己破産した時についておさらい
自己破産されると、確かに賠償金などが免責になるケースはあります。
相手に大きな過失がなければ、請求できないケースは実際あるのです。しかし相手の過失が少々悪質な時などは、たとえ自己破産していても請求できるケースはあります。
免責になるかどうかは、それこそ状況次第です。ただ、いずれにしても加害者と示談交渉する事にはなるでしょう。被害者1人で交渉するのは大変ですし、やはり弁護士に相談するべきです。