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    交通事故によって複数の後遺障害が残った時の慰謝料について

    2021.10.06
    交通事故によって複数の後遺障害が残った時の慰謝料について

    最終更新日 2024年9月11日

    交通事故で負傷した被害者は、しばしば加害者に慰謝料を請求しています。

    後遺障害が残ってしまうと、被害者としては精神的苦痛を覚えているので、加害者にはお金を請求している訳です。ただ交通事故で負傷する箇所は、もちろん1箇所とは限りません。

    複数の箇所が負傷してしまう事もあるのですが、その場合は複数を組み合わせた併合ルールが適用されます。一番重たい等級が繰り上げられるのですが、例外もあります。

    複数箇所の負傷と併合による繰り上げ

    2ヶ所以上の負傷は等級が繰り上げられる

    交通事故による後遺障害には、色々な等級があります。全部で14段階の等級があって、1級が一番重たいのです。1級になれば、支払われる慰謝料も一番高くなります。

    ところで交通事故で負傷する箇所は、必ずしも1つだけとは限らないでしょう。腕だけを負傷するとは限りません。腕の他にも、内臓や足などを一緒に負傷してしまうケースもあります。

    2ヶ所以上が負傷した時は、等級が繰り上げになる事もあるのです。複数の箇所が6級だったとすると、4級などに繰り上げられる事はあります。

    等級の併合の基本ルール

    併合によって繰り上げられるルールは、下記の通りになります。

    1〜5級同士の複数併合一番重たい等級を3つ繰り上げ
    1〜5級と6〜8級、もしくは6〜8級同士の併合2つ繰り上げる
    9〜13級同士、1〜8級と9〜13級の併合1つだけ繰り上げる
    14級と他の等級の併合一番重たい等級を採用

    等級の併合の具体的な例と各箇所の系列

    具体例ですが、肘関節の機能に関する障害が残り、3つの歯に対する矯正が必要になったとします。前者は12級相当であり、後者は14級と見なされますから、上記の基本ルールの4つ目を採用します。一番重たい12級と判定されるのです。

    また脊柱の運動障害が残って、片足が3センチ短縮したとします。前者は後遺障害8級相当であり、後者は10級相当になりますが、この2つの組み合わせは基本ルールの3つ目を採用します。重たい方は8級なので、1つ上の7級と判定されます。

    さらに4級と5級の組み合わせの場合、一番重たい4級を3つ繰り上げますから、1級になります。

    なお体には色々なパーツがあって、全部で35のグループに分類されているのです。そのグループは系列と呼ばれるのですが、上記のように2つ以上の組み合わせで繰り上げされる為には、異なる系列の等級でなければなりません。

    障害の併合に関する例外

    14級と1級の併合ルールの例外

    ただし上記の併合ルールには、例外もあります。例えば14級同士は、複数組み合わせられても繰り上げされません。やや極端な例ですが、体の5ヶ所が14級相当になっていても、14級のままになります。

    また1級を超える事はありません。2級同士が組み合わせられても、最大1級という事になります。

    併合の組み合わせ等級という例外

    組み合わせ等級というパターンもあります。例えば左右両方の腕が全廃になりました。右と左は異なる系列で、その症状は5級相当になるのです。

    上記のルールを適用すれば2級になるものの、1級の基準の1つに「両上肢の用を全廃」があります。ほぼそれと同じ状態なので、組み合わせ等級で1級と認定されるのです。

    障害の乱れを考慮した併合の例外

    順番の乱れなどを考慮する例外もあります。

    例えば片腕を手関節以上で失って、もう片方の上では肘関節以上で失われました。上記のルールによれば併合1級ではあります。しかし1級には「両上肢をひじ関節以上で喪失」という障害があるのですが、上記の症状はそのレベルではありません。

    この症状を1級で認定してしまうと、本来の順番が乱れてしまうような状態になるので、2級と認定されるのです。

    1つの症状を複数視点で評価している時は併合しない

    症状によっては、1つの症状は2つ以上が組み合わさっているように見える事があります。しかし、それは1つの症状を複数の視点で評価しているのと同じなので、一番重たい等級が採用される事もあるのです。

    例えば片側の大腿骨が変形し、同じ側の下肢が1センチ短縮したとします。前者は12級であり、後者は13級です。しかし後者の13級は大腿骨が変形した結果、そのような状態になっているのです。2つが組み合わさった訳ではないので、上位の12級を採用します。

    1つの障害が他の障害に派生する時の併合

    また1つの障害は、他の障害を引き起こす事もあります。偽関節もその1つです。その関節が残った事により、周辺箇所に神経症状が引き起こされる事もあるのです。その場合、上位の等級を採用します。

    例えば上腕骨に偽関節が残り、その箇所に神経症状が発生しました。前者は8級で、後者は12級になります。上位である方の8級で認定されるのです。

    後遺障害が併合した時の慰謝料と弁護士相談

    併合と合計額の低い方を採用する

    繰り上げられれば、その等級に対する慰謝料が支払われる事になりますが、併合と合計額が比較される事もあるのです。

    やや極端な例ですが、併合すると慰謝料が600万円になるとします。しかし複数等級の慰謝料合計が580万円の時は、600万でなく580万の方を採用するのです。安い方を採用する形になります。

    逸失利益に関する併合はどうなるか?

    逸失利益ですが、基本的には併合された等級が基準になるのです。例えば6級同士が併合すれば、上記のルールでは4級になります。その場合、4級を基準に逸失利益を決定する訳です。

    しかし逸失利益の場合、やや微妙な一面もあります。実際に裁判を行ってみれば、併合された等級によって減収分のお金が支払われるとは限りません。状況は多彩ですし、色々な要素を考慮して最終的な逸失利益を決定する事になります。上述の基本ルールだけで算出するとは限らないのです。

    後遺障害の等級で困った時は弁護士に相談

    等級の併合の概要は、上記で触れた通りではあります。以上の点は、少々複雑であると思われたかもしれません。実際、併合の基本ルール自体が少々複雑です。基本的には一番重たい等級を繰り上げますが、例外もある訳です。

    この等級に関する疑問点が出てきた時や、相手側から提示される等級に納得できない時などは、交通事故に詳しい弁護士に相談してみる方が良いでしょう。交通事故に強い弁護士なら、等級に関するサポートを受ける事もできます。

    また弁護士は、相手側との交渉を代行してくれるのです。相手側は不利な条件を提示してくる可能性もありますが、交渉に慣れている保険会社も多いです。その会社と交渉するのも大変ですし、等級判定は慰謝料にも大きく影響してくるので、法律事務所への相談も検討してみると良いでしょう。

    交通事故に関する相談は初回無料の法律事務所がおすすめ

    交通事故で複数箇所に後遺症が残ってしまう可能性はあります。その場合は併合になる訳ですが、一番重たい等級が繰り上げられるのが基本ではあります。ただ組み合わせ等級のような例外もあるので、ルールは少々複雑です。

    各等級の特徴をよく理解していないと、判断に困ってしまう事もあります。

    難しそうな時は、やはり法律事務所に相談するのが一番無難です。慰謝料も増額される可能性があります。

    多くの法律事務所では初回相談が無料ということもあり、気軽に相談してみるのが良いでしょう。