交通事故でむちうちになった場合の慰謝料について
最終更新日 2024年9月11日
交通事故でむちうち症状になった場合の最初の動き
もし交通事故の被害者になってしまった場合は、どのように対応するべきなのでしょうか。
気が動転して身体も痛い、パニックになるお気持ちは分かりますが、事故直後こそ冷静に、とにかく慌てず、適切に行動することが重要です。この初動がその後の慰謝料など賠償金にも影響してきます。
たとえば、事故現場で「身体は大丈夫」、「車がダメージを受けただけ」などと話していた場合は、物件事故(いわゆる「物損」)扱いとなり、その後の加害者側保険会社が人身事故として対応してくれない場合も生じ得ます。
事故直後から怪我をしたことが明らかな場合は、その旨加害者や臨場した警察官にも伝え、人身事故として処理してもらったうえ(診断書の提出は後日で問題ありません)、できるだけ早期に病院へ行って治療をしてもらいます。
むちうちの場合の治療先は、大きく分けて病院と整骨院(接骨院)があります。
事故直後はまず病院(整形外科、外科等)へ行くようにしましょう。加害者側保険会社の考え方では、整骨院は医師がおらず「病院」ではありません。西洋医学的な検査ができませんし診断書も作成できないからです。
特にむちうち症などの場合は、先ずは必ず病院で症状を診てもらい、具体的な診断名を受けてから、その後初めて、その部位や部位数に合わせて整骨院に通院するようにしましょう。
病院と整骨院(接骨院)に並行して通いたい時は、医師の許可を貰って病院と併用するようにします。医師によっては東洋医学を認めず、診断書に「整骨院への通院を認めない。」と定型的に記載する方もいるからです。
こうした場合では保険会社としても整骨院通院の必要性を認めがたく、治療費が支払ってもらえない可能性があります。このような医師に当たった場合は転院するか、必ず事前に保険会社担当者と相談するようにするのが無難です。
また、病院と整骨院を併用し、整骨院をメインに通院する場合でも、病院への通院も最低1か月に1回は確保するようにしましょう。治療を続けたものの症状が残った場合、「後遺障害診断書」を作成することになりますが、病院へ通院していないと医師が後遺障害診断書の作成を渋ることもありますし、何より正確な症状経過を医師に分かってもらえず診断書の内容が良くないという事態にもなり得るからです。
そして、この後遺障害として認定される等級(むちうちの場合に認定される可能性がある後遺障害は14級か12級が主)が最終的な慰謝料金額にも大きく影響します。
むちうち症状の場合の慰謝料相場
ではこの慰謝料金額は具体的に算定するのでしょうか。
慰謝料とは、精神的苦痛に対する賠償金のこと。交通事故においては、入通院(お怪我をしたこと)の苦痛に対する「傷害慰謝料」慰謝料と、治療にもかかわらず症状が残存してしまった苦痛に対する「後遺障害慰謝料」の2種があります。傷害慰謝料は怪我をした交通事故全てのケースで支払いがあるのに対し、後遺障害慰謝料は、自賠責保険において後遺障害の認定がなされた場合にのみ支払われます。
そして、これら2種の慰謝料の算定基準は3つあります。いわゆる、自賠責基準、任意保険基準、そして裁判基準(弁護士基準)と呼ばれるものです。
自賠責基準は、加害者加入の自賠責保険が使用する慰謝料算定の基準で、基本的には3つあるなかで最も安い基準です(ただし、通院頻度が高い場合は例外的に自賠責基準による算定が高くなることもあります)。
自賠責基準より一般的に高く算定されるのが任意保険基準、そしてそれよりもさらに高く算定されるのが裁判基準(弁護士基準)です。関西では、裁判基準は「赤本基準」、「緑本基準」(大阪地裁管轄内)などと算定表が記載された本の色を参照して呼ばれることもあります。
裁判基準が他2つの基準と決定的に違うのは、通院回数ではなく通院期間(総治療期間)を基準に慰謝料算定されることです(ただし、通院頻度が少ない場合は異なる)。つまり、一定程度の頻度以上で通院していれば、通院頻度の多い・少ないは問題とならず、単純に通院期間で慰謝料算定してもらえるのです。その結果、自賠責基準や任意保険基準よりも多額の慰謝料を獲得することができるのです。
ここが弁護士に交通事故の交渉を任せるメリットの1つです。弁護士費用特約に加入しれいれば、(特約所定の上限金額を超えない限り)この増額分は全て被害者(あなた)ご自身が受け取ることができるのです。
では、具体的なむちうちの場合の具体的な慰謝料相場を見てみます。
まず、自賠責基準では、30回通院すると25万8,000円、50回通院すると43万円となります。この通院には、整骨院への通院も含みます。
そして、任意保険基準の場合は、それら金額を少し増額した金額です。保険会社や担当者によっても様々ですが、30回通院の場合は30万円程度、30回通院の場合は45万円程度が多いのではないでしょうか。
それに対し、裁判基準の場合では、通院回数ではなく通院期間で算定します。3か月通院であれば53万円、6か月で89万円です(ただし、一般的な訴外での交渉時にはこれら金額の80~90%程度で示談することが多いです)。
このように、同じ慰謝料であっても、裁判基準を採用することでかなりの増額が見込めることが分かります。
裁判基準で増額する、ということは後遺障害慰謝料でも同様のことがいえます。後遺障害等級14級の場合は、自賠責基準であれば32万円、任意保険基準であれば40万円程度が相場であるのに対し、裁判基準の場合は110万円となります。一方で、後遺障害等級12級の場合は、自賠責基準であれば93万円、任意保険基準が100万円程度が相場であるのに対し、裁判基準で290万円にもなります。
被害者の中には、「弁護士って相談しづらい」、「まわりに弁護士なんていない」と思って、自分で示談交渉に臨む型もいらっしゃいます。しかし、相手は損害保険のプロ。ご自身では「プロVS素人」の構図となり、交渉が思うように進まない、望むような慰謝料を貰えないということも珍しくありません。そのためにも、交通事故に精通した弁護士に相談するのが得策です。
加えて、上記のような裁判基準(弁護士基準)での算定により慰謝料の増額が狙えるケースであれば、経済的にもメリットが大きいです。
しかし弁護士をどのようにして探したらいいのか、わからないということもあるでしょう。連携という点では、通院先の病院や整骨院の先生に訊ねるのがベストですが、最近であればインターネットでも交通事故に強みをもつ弁護士は多く探すことができます。
交通事故に精通した弁護士でむちうち症の慰謝料相場が上がる可能性がある
弁護士は医師の診療科と同じで、取扱分野や得意分野は様々です。相談の前にはまずこの点を確認しましょう。
むちうち症状においては、後遺障害の等級認定に慣れた弁護士を選ぶのが安心です。むちうち症の自覚症状としては、頭痛やめまい、しびれや耳鳴りに難聴といったものが挙げられますが、これら症状の記録方法、医師への伝え方、そして最終的な後遺障害の等級認定可能性を見越したアドバイスができる弁護士はそう多くありません。
また、相手方の保険会社から、打ち切りを命じられることもあります。このような時も弁護士または医師に相談するといいでしょう。打ち切られたら自費で治療を受けることになりますが、打ち切り後の症状についても交通事故との因果関係が明らかである場合は、その通院期間分の治療費等も法的には損害として請求することが可能です。
このあたりの処理は手続もややこしいので、専門家である弁護士に相談するようにしましょう。
むちうちになった場合の慰謝料についてのおさらい
慰謝料の算定基準は、弁護士に相談した方が増額することは間違いありません。弁護士であれば、交渉が妥結しなかったとしても、調停または裁判という方法を採ることもできます。
そのためにも、不満があったとしても焦らず、必ず信頼のおける弁護士に依頼するようにしましょう。