交通事故による顎関節症の後遺障害等級と慰謝料|知っておきたいこと

最終更新日 2025年1月10日
交通事故による顎関節症の後遺障害等級と慰謝料|知っておきたいこと
交通事故で顎関節症を発症した場合、後遺障害等級認定は、その後の生活に大きな影響を与えます。この記事では、交通事故による顎関節症の症状、原因、後遺障害等級、慰謝料、逸失利益について、知っておくべき情報を詳しく解説します。
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顎関節症とは?主な症状と原因
顎関節症は、顎の関節(顎関節)やその周辺の筋肉、靭帯などに損傷を受けることで発症します。交通事故による場合、以下の要因が複合的に作用して発症することがあります。
- 直接的な衝撃:事故の際に顎を直接打撲した場合、顎関節の関節円板のずれや変形、骨折などが起こり、顎関節症を発症することがあります。
- 間接的な衝撃:むち打ち症(頚椎捻挫)など、首への衝撃が原因で顎関節に負担がかかり、顎関節症を発症するケースもあります。首の筋肉の緊張が顎関節に影響を与えることがあります。
- 精神的なストレス:事故による精神的なストレスや緊張が筋肉の緊張を引き起こし、顎関節症の症状を悪化させることもあります。
主な症状
- 顎の痛み:(噛む時、口の開閉時、安静時など)
- 口が開けにくい、閉じにくい:(開口障害、閉口障害)
- 顎を動かすと音がする:(カクカク音、ジャリジャリ音、ゴリゴリ音)
- 噛み合わせの変化、違和感
- 頭痛、肩こり、首の痛み、顔面痛
- 耳鳴り、耳の詰まり感、めまい
- 嚥下障害:(飲み込みにくさ)
これらの症状により、食事や会話に支障をきたすだけでなく、噛み合わせの悪化や歯ぎしりを引き起こすこともあります。重症の場合、咀嚼や言語機能の喪失に至ることもあります。
顎関節症の後遺障害等級
顎関節症の後遺障害等級は、症状の程度によって1級から14級まで幅広く認定される可能性があります。後遺障害等級認定は、適切な賠償請求を行う上で非常に重要です。
具体的な認定基準
- 1級:咀嚼または言語の機能を完全に廃したもの(例:流動食しか摂取できない、発音が全く不明瞭)
- 10級:咀嚼または言語の機能に著しい障害を残すもの(例:通常の食事が困難、発音が著しく不明瞭)
- 12級:咀嚼または言語の機能に障害を残すもの(例:ある程度の食事制限が必要、発音に若干の不明瞭さがある)
- 14級:局部に神経症状を残すもの(例:顎の痛みや痺れが残存)
後遺障害等級認定には、他覚的所見(レントゲン、CT、MRI画像、医師の診断書、関節可動域の検査結果など客観的な証拠)が重要となります。特に、開口量(口を開ける幅)の測定や、咀嚼機能検査、歯科医師による詳細な診断書などが重要です。
顎関節症の慰謝料
後遺障害が認定された場合、後遺障害慰謝料を請求できます。慰謝料の金額は、認定された等級によって大きく異なります。以下は自賠責基準と弁護士基準(裁判基準)の慰謝料額の例です。弁護士基準は、過去の判例に基づいて算出されるため、自賠責基準よりも高額になることが一般的です。
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級 | 1,100万円 | 2,800万円 |
3級 | 829万円 | 1,990万円 |
9級 | 245万円 | 690万円 |
12級 | 94万円 | 290万円 |
14級 | 32万円 | 110万円 |
顎関節症の逸失利益
顎関節症により労働能力が低下した場合、逸失利益を請求できます。逸失利益は、事故前の収入、労働能力喪失率、労働能力喪失期間などに基づいて算出されます。労働能力喪失率は、後遺障害等級に応じて異なります。特に、言語機能に支障が出た場合は、仕事内容によっては大きな影響を受ける可能性があります。例えば、営業職や接客業など、会話が重要な仕事に従事している場合は、逸失利益が高額になる可能性があります。
病院への受診と専門家への相談
適切な後遺障害等級認定を受けるためには、病院(特に口腔外科や歯科)で適切な検査を受け、医師の診断書を作成してもらうことが重要です。自覚症状だけでなく、客観的な検査結果が等級認定に大きく影響します。特に、以下の検査は重要です。
- レントゲン、CT、MRIなどの画像検査
- 関節可動域検査(開口量測定など)
- 咀嚼機能検査
- 歯科医師による詳細な診断書
また、交通事故に詳しい弁護士や行政書士などの専門家に相談することで、後遺障害等級認定の手続きや保険会社との交渉を有利に進めることができます。専門家は、医学的証拠の収集や過去の判例に基づいた主張を行い、適正な賠償額の獲得をサポートします。特に、後遺障害等級認定の申請手続きは複雑なため、専門家のサポートを受けることを強くお勧めします。保険会社との交渉も専門家が代行することで、精神的な負担を軽減できます。
こんな場合はすぐに専門家へ相談しましょう
- 後遺障害等級認定の申請手続きが分からない
- 保険会社からの提示額に納得がいかない
- 後遺障害等級が適切に認定されていないと感じる
- 保険会社との交渉が精神的に負担になっている
- その他、賠償問題で困っていることがある
専門家に相談することで、以下のようなメリットが期待できます。
- 適切な後遺障害等級の認定を受けられる可能性が高まる
- 適正な慰謝料や逸失利益の算定・請求をサポートしてもらえる
- 煩雑な保険会社との交渉を代行してもらえる
- 精神的な負担を軽減できる
関連情報
- 裁判所 – 交通事故に関する裁判例 (裁判所のウェブサイトへのリンク。交通事故の裁判例が掲載されています。)
- 日弁連交通事故相談センター (日弁連の交通事故相談センターへのリンク。弁護士による無料相談窓口があります。)
- お近くの弁護士会 (お住まいの地域の弁護士会を検索してみてください。)
まとめ
交通事故による顎関節症は、症状の程度によって後遺障害等級が大きく異なり、慰謝料や逸失利益の金額にも大きな影響を与えます。適切な補償を受けるためには、早期に病院を受診し、交通事故に詳しい専門家に相談することをおすすめします。