治療費のスムーズな支払いが難しい時の傷病届
最終更新日 2024年9月11日
交通事故の加害者は、必ずしも治療費をスムーズに支払ってくれるとは限りません。
例えば加害者の保険会社が治療費支払いを打ち切ってくる事は、たまにあります。そうかと思えば、加害者にお金が無い事もあるのです。それで治療を受けられないのは困るので、被害者としては健康保険を使いたくなる事もあるでしょう。
よく誤解されていますが、交通事故に対する治療を受ける時でも、健康保険は使えるのです。
目次
第三者行為による傷病届を提出する所とその理由
第三者行為による傷病届の提出先
交通事故で治療を受ける為に病院に行きますと、たまに窓口で健康保険は使えないと言われてしまう事もあるのです。しかし、それは全くの誤解です。実際は、交通事故でも健康保険は使えます。現に公的機関も、健康保険を使えると明示しているのです。
ただし健康保険を使う為には、第三者行為による傷病届という書類を提出しなければなりません。どこに提出するかというと、保険証の発行元です。
会社の社会保険に加入しているなら、健保に提出する事になるでしょう。もしくは健康保険の組合に提出します。また国民健康保険に加入しているなら、役所にて手続きを進める事になります。
第三者行為による傷病届を提出する理由
少々専門的な表現ですが、第三者行為による傷病とは「保険に加入している本人とは関係ない第三者による健康の害」です。例えば誰かと喧嘩した時などは、第三者行為による傷病に該当するのです。交通事故で負傷した時も、第三者行為による傷病に該当します。
第三者の行為によって負傷した時は、その治療費の支払い義務は加害者にあるのです。ですから交通事故では、よく被害者は加害者にお金を請求しているのです。
その交通事故で健康保険を使うなら、保険組合や役所にはお金を立て替えてもらうような状態になります。本来は加害者本人が負担すべきなのですが、やむを得ない事情があって組合などに支払ってもらう形になるのです。
ですから組合や役所としては、治療費を加害者に請求する事になるでしょう。もちろん請求するにしても、加害者に関する情報が必要です。加害者の住所や名前や、事故の詳細情報などの情報を元に、組合は治療費を回収する事になります。ですから交通事故の被害者としては、傷病届に色々な情報を書いて、組合などに提出する事になるのです。
第三者行為による傷病届の手続きでの必要書類と主な注意点
治療費に関する傷病届を提出する時に必要な書類
ところで第三者行為による傷病届に関する事務手続きでは、色々な書類を提出することになります。傷病届だけではありません。具体的には、下記の書類も添付する必要があります。
- 事故発生状況報告書
- 同意書
- 誓約書
- 交通事故証明書
- 健康保険証
- 印鑑
1つ目の報告書には、必要に応じて図などを描いて、交通事故の状況を詳しく記入します。
2つ目は、個人情報の同意書になります。事務手続きを進めていくと、加害者には被害者の情報も伝える事になるので、その同意を取る為の書類です。
3つ目は、「加害者は治療費を支払う」旨を同意する書類です。ですから加害者の署名も必要なのですが、たまに書いてくれないケースがあります。その場合は、被害者としては「拒否されました」と書いて提出すれば、問題ありません。
4つ目ですが、一旦は人身事故として届け出されていた時は、交通安全運転センターから発行してもらう書類です。ちなみに、何らかの理由があって警察に人身事故の届け出を行っていなかった時は、人身事故証明書入手不能理由書を提出する事になります。
治療費の傷病届に関する手続きの主な注意点
上述の傷病届に関する手続きには、いくつか注意点もあります。具体的には、下記のような点は注意が必要です。
- 業務上もしくは通勤途中の事故は健保は使用できない
- 重大な過失があると使用できない
- 病院によっては断ってくることも
上記の1つ目ですが、仕事上の事故は労災がおります。仕事が原因で負傷したのであれば、会社が治療費などを全て支払ってくれるのです。にもかかわらず健康保険を使ってしまいますと、返還請求されてしまうことがあるので、注意が必要です。
2つ目ですが、飲酒運転や無免許運転などの過失があると、健康保険は使えません。
そして3つ目は、転院などを検討するパターンです。上記でも触れた通り、そもそも病院で治療を受ける時は健康保険は使える筈なのです。しかし病院によっては、使えないと言ってくるケースは実際あります。
その場合どうすれば良いかというと、まず病院と交渉する事になるでしょう。何とか健康保険で治療を受けられないかと、話し合いしてみる訳です。
しかし病院によっては、たとえ話し合いしても応じてくれない事があります。その場合は、別の病院で治療を受ける事も検討してみると良いでしょう。実際、健康保険で治療を受けられる病院は沢山あるのです。
加害者との示談交渉と過失割合が大きい時の傷病届
示談交渉が成立する前に治療費の傷病届を提出する
ところで交通事故が発生すれば、被害者としては加害者と示談交渉する事になるでしょう。健康保険を使いたいなら、その交渉前に傷病届を提出する必要があります。
示談交渉すれば、いずれは話し合いで決着がつく事もあるでしょう。ですが一旦決着が付いてしまいますと、健康保険でお金を支払うのは難しくなってしまうのです。
ですから傷病届はなるべく早めに提出する必要があります。少なくとも交渉する「前」に提出すべきです。交渉した「後」ではありません。
過失割合が大きい時は傷病届を提出すべき
また被害者によっては、過失割合の数字が高いこともあります。飲酒運転などが原因で、被害者の過失割合が高くなるパターンもありますが、その時こそ傷病届を提出するべきなのです。
というのも過失割合が高いと、支払われる治療費も減額されてしまいます。しかも自由診療ですと、被害者が支払う治療費の金額も大きくなってしまうのです。
しかし健康保険で支払えば、自己負担の割合を小さくする事はできます。ですから過失割合が大きい時は、なるべく早めに傷病届を提出する必要があります。
治療費の示談交渉が難航しそうな時は弁護士に相談
ところで健康保険で治療費を支払った後は、加害者とはそのお金に関する示談交渉もする必要があります。一旦は健康保険で立て替えたので、改めてお金を支払って欲しい旨を加害者側に伝える訳です。
しかし加害者によっては、それも難しい事があります。加害者側の保険会社は、被害者側の味方をしている訳ではありませんし、不利な内容で交渉してくる事もよくあるのです。
もしも交渉が難しそうな時は、やはり交通事故に強い弁護士に相談する方が無難です。弁護士であれば、相手との交渉も代行してくれます。
まとめ
交通事故の治療費は、必ずしもスムーズに全額支払われるとは限りません。ですが、その時でも健康保険で治療費を支払う事は可能なのです。ただ加害者に治療費を請求する都合上、傷病届という書類も提出することになる訳です。
基本的には、医療費の負担が大きくなりそうな時は、早めに傷病届を提出する方が良いでしょう。ただ加害者との示談交渉が難航しそうな時などは、やはり交通事故に強い弁護士に相談してみるのが無難です。