交通事故の判例や裁判例を知るメリットとその調べ方
最終更新日 2024年9月11日
交通事故は、すでに相当な発生件数になっています。裁判が行われた交通事故も沢山あり、その記録も残っているのです。
もちろん裁判になれば判決が下りますから、その経緯や結果などのデータも全て残っています。加害者側の保険会社は、その判例や裁判例を引き合いに出してくる事もあります。
しかし保険会社の主張は、必ずしも正しいとは限らないのです。それを考慮すると、過去の判例や裁判例はある程度知っておくべきです。
目次
交通事故の判例や裁判例とそれを知るメリット
交通事故の多数の裁判例や判例と保険会社の主張
交通事故はすでに多数発生していて、沢山の判例も保存されているのです。
交通事故によって仕事が難しくなったという事例もあれば、弁護士基準よりも高い慰謝料が支払われたという判例もありますし、主張が却下された裁判例もあるのです。その事例は、枚挙に暇がありません。
そして交通事故の保険会社も、その判例を押さえているのです。ですから保険会社と示談をする際に、過去の例を引き合いに出してくるケースはよくあります。過去の実例を見せられると、保険会社の主張は正しいのではないかと思ってしまう事もあるでしょう。
しかし、実際には正しいとは限らないのです。被害者側も判例や裁判例の実例は押さえておいて、正しい知識を覚えておく必要があります。
裁判例と判例の意味の違い
ちなみに裁判例と判例は、意味合いは微妙に異なります。前者の裁判例とは下級審での判決や実例であり、後者の判例は最高裁判所での実例になるのです。
判例の資料には、判決文が全て書かれている訳ではありません。法的な論点だけを抽出して、ポイントを押さえて書かれているケースが多いです。
また下級審では、判決を下す際に最高裁判所の判例を基準にしている事が多いです。下級審と最高裁では拘束力の強さが異なるので、便宜上は両者の意味を区分けしている訳です。
交通事故の判例や裁判例を知っておくメリット
交通事故の被害者としては、上記のような判例や裁判例は知っておく方が良いのですが、それには下記のような理由があります。
- 賠償金などの相場が分かる
- 過失割合を決めやすくなる
- 適切な障害認定
上記の1点目ですが、示談によって決定される賠償金は、必ずしも妥当であるとは限りません。やや安すぎる事もあるので、その相場を知る為に過去の実例は知っておくべきなのです。
2つ目ですが、被害者の過失割合が大きくなってしまうと、慰謝料も減額されてしまうのです。その過失割合の決め方を知りたい時は、過去の判例は大いに参考になります。
そして3つ目ですが、自分の症状に似た判例などを参考にすれば、適切な等級で認定されやすくなります。過去の判例の考え方などを参考にしてみると、保険会社にも対抗しやすくなります。
交通事故の判例や裁判例を調べる方法
判例や裁判例を調べられる電子のデータベース
どうすれば判例や裁判例を調べられるかというと、大きく分ければ電子媒体もしくは紙媒体があるのです。WEBなどで調べられる判例は、前者の電子媒体に該当します。ただしWEBの情報は玉石混交な状態になっていますし、全てを盲信するのは禁物です。
幸いにも、裁判所は過去データをWEBで調べられるようにしてくれています。裁判所のデータベースは誰でも閲覧する事ができ、料金も無料なのです。ただ1つ注意すべきなのは、「全て」の判例を網羅している訳ではありません。重要度が高いと見込まれる判例のみ、データベースで見る事ができます。
ちなみに裁判所だけでなく、民間企業もデータベースを公開しているのです。ただし有料サービスになり、たいてい月額1万円ぐらいになります。
過去の判例や裁判例を載せた主な文献
また紙媒体の文献で、過去の判例を調べる事もできるのです。具体的には、下記のような専門的な文献があります。
- 赤い本
- 青本
- 緑本
- 緑のしおり
赤い本は毎月刊行されていて、弁護士向けの文献になります。損害賠償や裁判例の要約などが書かれていて、東京地裁の見解も明記されているのです。多くの弁護士の方々も、よく赤い本を参考にしています。
青本は日弁連が隔年で発行している文献で、交通事故の損害賠償の算定基準が書かれています。裁判例も掲載されているのですが、弁護士向けというより万人向けの文献になっています。
緑本は過失割合の基準を掲載していて、東京地裁の裁判官が書いてくれています。過失割合に関する判断基準もかなり詳細に書かれていて、一般の方でも分かりやすい内容になっていますが、弁護士もよく緑本で勉強しています。
そして緑のしおりは、大阪地裁の裁判官による文献であり、主に大阪地裁の基準を明示しています。
図書館の判例データベースと弁護士相談
その他の紙媒体の交通事故の文献と図書館のメリット
上記の他にも、下記のような文献があります。
- 自保ジャーナル
- 民事裁判判例集
- 判例百選
- 判例タイムズ
- 判例時報
必要に応じてこれらの文献にも目を通してみる方が良いのですが、いずれも価格は数千円台になります。数百円程度で買えるような文献ではありません。
それらの文献を参考にするのが難しい時は、やはり図書館を利用してみる方が良いでしょう。図書館であれば、書籍も簡単に検索する事ができますし、もちろん書籍は無料で読む事ができます。
図書館提供のデータベースで判例や裁判例を閲覧
ところで図書館のサービスは、書籍閲覧だけではありません。図書館には、過去の裁判の判例のデータベースもあるのです。
例えば国会図書館には、第一法規というサービスがあります。下記のような流れで手続きを済ませれば、過去の裁判の実例を見れるようになるのです。
- 電話やメールで図書館に連絡
- 連絡された内容に応じて書類や料金などを提出
- 会員登録を済ませる
- お知らせがメールで送られてくる
- パスワードを入力してサービス利用開始
ですから有料のサービスになりますが、データベースの蓄積量は非常に多いです。実に明治8年以降の判例が保存されていて、全てテキスト化されています。
その他にも、下記のようなデータベースのサービスがあります。
- 都立中央図書館の判例秘書
- 大阪府図書館のウェストロージャパン
保険会社に対抗するための判例や裁判例と弁護士のメリット
それで肝心な点は、保険会社の主張は必ずしも正しくない可能性があるのです。
保険会社としても売上げ数字を追求しているので、自社にとって有利な判例などを提示している可能性があります。であれば、被害者側としても過去の判例や裁判例は押さえておくべきでしょう。対抗手段が必要なので、判例で知識を覚えるイメージです。
しかしデータ量は膨大なので、自分1人で調べるのは手間がかかります。もしも面倒な時は弁護士に相談してみると、実践的な判例を見つけてもらう事もできます。
まとめ
適切な賠償金や慰謝料などを受け取る為にも、交通事故に関する知識は必要です。知識を学ぶ為には、やはり過去の判例や裁判例には目を通しておく方が良いでしょう。知識がある方が、保険会社の主張にも対抗しやすくなるからです。
ただ裁判例のデータベースの量は、とても多いです。実に明治時代からのデータ量になるので、自分1人で調べるのは少々難しい事もあるでしょう。その場合、やはり弁護士に相談してみるのが無難です。