交通事故の後に病院で発行される診断書の重要性
最終更新日 2024年9月11日
交通事故で負傷した時には、医師には診断書を書いてもらう事になります。その診断書の提出先は複数あり、保険会社に提出する事もあれば、警察にも提出します。ただし診断書にも2種類あって、後遺障害に関する診断書と、通常の診断書があります。
後遺症が残ったのであれば、特に前者の診断書は大切です。受け取れる金額にも大きく関わってくるため、適切な診断書を書いてくれる医師を選ぶ必要があります。
目次
交通事故の後に発行される診断書
診断書という文書とその作成料
診断書とは、医師の所見、意見を記載した書面で、概ね下記のような項目が記載されています。
- 傷病名
- 症状の経過・治療の内容・今後の見通し
- 主たる検査所見
- 初診時の意識障害の有無
- 既往症の有無等
- 入通院期間
- ギブスによる固定期間等
要するに、交通事故で受傷した具体的な内容が記載された文書が診断書です。
診断書の作成料は無償ではなく、文書料を支払う必要があります。
文書料は病院ごとで異なりますが、一般的なA4サイズの診断書は5,000円前後であり、後遺障害申請時に作成が必要な後遺障害診断書は5,000円から1万円程度が相場です。
ただし、交通事故の場合、診断書は常に自己負担する必要はありません。加害者加入の保険会社が治療費の対応している間(いわゆる一括対応中)は、文書料は保険会社が治療費支払いのタイミングで併せて支払うため、被害者が負担することはありません(なお、その支払いや診断書作成に必要なのが、提出を求められる「同意書」です)。
ただし、加害者が任意保険未加入である、被害者の過失割合が大きく一括対応してくれない場合などは、文書料は被害者で一時立替えて支払う必要があるため、不必要な通数を作成されないよう病院との協議が必要です。
交通事故の診断書は誰が発行するか
整骨院の柔道整復師の方は、施術で治療を担当してくれますが、診断書は作成できず、「施術証明書」を作成します。「診断書」は医師しか作成できないのです。
そのため、整骨院だけへの通院は良くなく、整骨院メインで通院する場合も必ず病院へ通院し、医師に診断書を作成してもらうことが欠かせません。
なお、医師は、患者からの診断書作成を依頼されれば、医師法上、原則その作成を断る事ができません。たしかに、医師によっては診断書作成を渋る方もいますが、法律上、作成義務があるのです。
ただし、作成さえすれば良く、患者の希望に沿った内容で作成する義務までは負いません。そのため、被害者(患者)としては、医師と良好な関係を築きつつ、少しでも良い内容の診断書を作成しれもらえるよう誠実に接しましょう。
具体的には、整骨院に通院するにしても、必ず先に病院に行って診断を受け、それに合わせる形で整骨院での施術部位を決めるなど、順序を間違えないようにすること、そして、整骨院メインで通院する場合でも、病院には2週間に1回、少なくとも1か月に1回は通院して医師の診察を受けておくことが重要です。
交通事故の後遺障害診断書と等級認定
交通事故の診断書にも2種類ある
交通事故の怪我では、懸命な治療にもかかわらず症状が完治しないことも珍しくありません。
その場合、被害者としては、「これ以上大きく良くならない」と感じた時点で治療を区切り(この区切ることを「症状固定」といいます)、後遺障害診断書を作成して後遺障害申請を行うことになります。後遺障害診断書とは、一般的な診断書とは異なるA3サイズの所定の様式ある診断書で、後遺障害認定においてはこの後遺障害診断書の記載内容が非常に重要です。
後遺障害診断書には、これまでの治療経過、症状固定時点での自覚症状、可動域検査などの各種検査結果などを記載します。
なお、後遺障害申請時に注意すべきポイントは、むち打ち症状であれば短くとも半年間(6か月)の通院は必要ということです。後遺障害認定においては、その他にも通院頻度や他覚的所見など様々な考慮要素がありますので、後遺障害申請をお考えの被害者の方は、弁護士や主治医にご相談されることをお勧め致します。
交通事故の診断書に詳しい病院や弁護士を選ぶ
交通事故の診断書を書いてもらう病院は慎重に選ぶべき
後遺障害診断書の作成にあたっては、病院や医師を選ぶという視点も大切です。
自賠責保険における後遺障害認定の手続は、ほとんどの場合は、自賠責調査事務所が資料のみを確認して判断する書面審査であり、口頭で症状を伝える機会はありません。
そのため、後遺障害診断書の記載内容が非常に重要なのですが、医師によってはこの点を理解していない方がいます。交通事故患者の対応実績が乏しく、あまり後遺障害診断書に詳しくない医師であれば、何が患者にとってメリットのある記載なのか、そもそも何を記載すべきかなどが分からず、十分な内容が盛り込まれないリスクがあります。
例えば、自覚症状ばかりを書いて検査結果を記載しない、そもそも可動域検査などを実施しないなどが考えられます。
しかし医師は治療のプロ。自賠責保険のプロではないので、仕方ありません。医師に記載していただきたい内容が具体的に分かっているなら、それは患者側から伝えるべきなのです。交通事故に詳しい医師であれば、患者の意図を汲み取った内容にしてくれるでしょうが、そのような医師は珍しく、作成を医師に丸投げしてしまうと、ほとんど場合で患者に不利な記載があるまたは有利な記載がほとんどないという結果になってしまいます。
このため病院や医師は、慎重に選ぶ必要があります。やはり交通事故の対応実績が豊富な病院、医師を選ぶ方が良いでしょう。
弁護士によっては診断書作成をサポートしてくれる
前述した「医師に記載していただきたい内容」とはどのような内容でしょうか。
自賠責保険では、公表はされていないもののどういった内容が重視され後遺障害認定されるかというおおよその考え方があります。しかし、繰り返しになりますが、医師は、必ずしもその内容を知っているとは限りません。
そこで考えるのが弁護士への依頼です。弁護士によっては、診断書の作成に関して、どのような内容を記載すべきか、その内容を医師にどのように点伝えるべきかなど、作成時のサポートをしてくれるのです。
ただし、相談するなら、やはり交通事故に強い弁護士を選ぶべきです。弁護士もそれぞれ専門分野は異なり、交通事故に詳しくなければ、このサポートはしてくれない可能性が高いです。
病院で発行される診断書の重要性についておさらい
交通事故で怪我をした場合に作成される診断書は、大きく2つに分かれます。怪我の内容を記載した一般的な診断書と後遺障害診断書です。
後遺障害診断書には、所定の様式があり、その記載内容がその後の後遺障害の認定可能性に大きく影響します。むち打ち症状の場合は、短くとも半年間は通院した上で作成を医師に依頼しましょう。
後遺障害診断書への記載内容は、医師全員が交通事故患者に慣れているわけではないため、病院や医師選びは重要です。そのうえで、具体的にどのような内容を記載してもらうべきかは、あらかじめ患者側で検討する必要があり、ご自身ではよくわからないのであれば、交通事故案件に強い弁護士に相談するのも1つの方法です。
このように、診断書は客観的証拠として交通事故案件の帰趨を大きく左右する重要な文書ですので、少しでも「大丈夫かな」ということがあれば、弁護士や主治医・柔道整復師の先生へのご相談をされることをおすすめします。