人身事故を起こした時に最初にするべきことについて
最終更新日 2025年12月5日
交通事故は、いつ誰が巻き込まれてもおかしくないものです。もしもの時に冷静に対応できるよう、人身事故を起こした場合に取るべき行動や、その後の義務について詳しく解説します。
特に、事故直後の対応は、その後の治療や保険金請求に大きく影響するため、適切な手順を知っておくことが非常に重要です。
人身事故に遭った場合にすべきこと:事故発生から警察への届け出まで
交通事故に遭ってしまった場合、パニックにならず、以下の手順で冷静に対応しましょう。
1)まずは人命救助処置と二次被害の防止
何よりも最優先すべきは人命救助です。けが人がいる場合は、迷わず119番へ救急車を呼んでください。救急車の到着を待つ間、可能な範囲で応急処置を施しましょう。
また、さらなる事故を防ぐための二次被害防止措置も非常に重要です。車両が動かせる場合は、安全な路肩や停車帯へ移動させましょう。ハザードランプを点灯させ、夜間や見通しの悪い場所では発炎筒や三角表示板を設置するなどして、後続車に事故発生を知らせ、追突などの二次被害を防ぐことが大切です。
2)警察への連絡:義務と重要性
人命救助と二次被害防止が完了したら、すぐに110番で警察に連絡しましょう。けが人がいない場合(物損事故)であっても、交通事故を起こした場合は警察への連絡が義務付けられています。これは、道路交通法第72条に定められた「交通事故報告義務」であり、これを怠ると3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金に処せられる可能性があります。また、警察への届け出がないと、後述する「交通事故証明書」が発行されず、保険会社への請求ができなくなるため、必ず連絡してください。
警察が到着するまでの間も、落ち着いてすべきことがあります。警察到着までに被害者がすべきことを事前に確認し、状況を整理しておきましょう。また、交通事故後の正しい警察への届け出方法を知ることで、スムーズな手続きが可能になります。
3)事故状況の記録:証拠の確保
事故現場は、その後の保険請求や示談交渉において重要な証拠の宝庫です。車両を移動しなければならない場合でも、移動する前に以下の点を中心に、できる限り多くの写真を様々な角度から撮影しておきましょう。最近ではスマートフォンが高性能なカメラを搭載しているため、積極的に活用することをおすすめします。
- 事故車両全体の損傷状況(前後左右、広範囲から)
- 相手車両の損傷状況
- 事故現場全体の状況(信号、道路標識、路面の痕跡、散乱物など、引いた画角で)
- 周辺の状況(電柱、建物、店舗など、位置関係がわかるように)
- 相手のナンバープレート、運転免許証、自賠責保険証
- 目撃者がいればその顔写真と連絡先(本人の許可を得て)
ただし、他の車の交通を著しく妨げるような状況では、無理に長時間撮影せず、安全を最優先してください。
4)相手方の情報確認:トラブル回避のために
警察官からも指示があると思いますが、相手方と別れる前に、必ず以下の情報を確認しておきましょう。名刺だけでは不十分な場合があるため、免許証を提示してもらい、正確な情報を控えることが大切です。
- 相手方の氏名、住所、連絡先(電話番号)
- 運転免許証の番号
- 車のナンバープレート
- 加入している自動車保険会社名と、自賠責保険証明書番号、任意保険証券番号
- 勤務先情報(任意ですが、後の連絡に役立つ場合があります)
事故後の補償については、相手の方と直接金銭のやり取りをすることはほとんどなく、相手方が加入している任意保険会社の担当者が対応することになります。そのため、正確な保険情報を確認しておくことが、後の手続きをスムーズに進める上で非常に重要です。
5)交通事故証明書の取得:保険請求の必須書類
警察への届け出が完了すると、後日「交通事故証明書」が発行されるようになります。この交通事故証明書は、自賠責保険任意保険の補償もからの補償も受けるために、必ず必要となる公的な書類です。警察への届け出がないとこの証明書は発行されず、保険金が支払われない可能性があるので、忘れずに手続きを行いましょう。
警察から事故状況を詳しく聞かれる際には、痛みや違和感のある箇所を全て正確に伝えることが重要です。事故直後は興奮状態にあるため、痛みを強く感じないこともありますが、後になって症状が出ることも少なくありません。
6)医療機関での受診:人身事故の診断書が必須
人身事故は、死傷者が発生している事故ですから、必ず病院に行って、事故によって負われた怪我の診察を受けてください。そして、医師に「診断書」を発行してもらうことが非常に重要です。
この診断書は、警察に提出することで物損事故から人身事故への切り替えや、交通事故と怪我の因果関係を証明する上で不可欠な書類となります。診断書がなければ、保険会社が治療費の支払いを認めないケースもありますので、事故後できるだけ早く医療機関を受診しましょう。痛みや違和感がある場合は、迷わず受診してください。
交通事故後の対応は、初期の段階で適切に行うことで、その後の治療や補償のスムーズさに大きな差が出ます。焦らず、一つ一つのステップを確実に行いましょう。

