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    従業員が起こした交通事故に対する会社の責任について

    2022.05.30
    従業員が起こした交通事故に対する会社の責任について

    最終更新日 2024年9月11日

    交通事故には色々なケースがあって、必ずしもプライベートで車を運転しているとは限りません。仕事で車を運転していて、交通事故が発生するケースもあるのです。

    たとえば、従業員が社用トラックや社用車などを運転していて事故を起こしたら、誰が責任を負うのでしょうか。もちろん運転をしていた従業員自身も責任を負いますが、従業員を雇っている会社にも責任が発生します。いわゆる使用者責任です。

    他にもどんなケースで誰が責任を負うのか、以下解説します。

    従業員による事故で会社の責任が認められるケース

    通常業務だけでなくマイカー通勤での事故も会社の責任が問われることも

    会社が所有している車の場合、従業員が事故を起こしたのであれば、会社はほぼ確実に責任を負うことになります。法律用語でいうと、会社は使用者責任と運転共用者責任の両方の責任を負うのです。
    つまり、従業員の労働による利益を得ていること、または車の運行利益を得ている会社としては、その利益に見合うリスクも許容しなければならないという考え方です。

    では一方で、会社所有の車ではなく、従業員所有の車で従業員が事故を起こした場合、会社は責任を負うのでしょうか。

    たとえば、従業員がマイカー通勤をしている場合などです。

    会社の認識としては、従業員が自身の車で事故を起こしたのだから自己責任だと考えるかもしれません。しかし、会社の費用負担などによっては、マイカー通勤だとしても会社が責任を負うこともあり得るのです。

    マイカー通勤にもかかわらず会社が責任を負うケース

    マイカー通勤の事故は、どういう時に会社の責任が問われるのかでしょうか。
    たとえば、下記のような場合は、従業員のマイカーでの事故としても、会社が責任を負うことがあり得ます。

    • 車の維持費や修理代は会社が負担していた
    • ガソリン代も会社負担
    • 会社がマイカー通勤を薦めていたり、特定の従業員がマイカー通勤することを許容していた
    • マイカー通勤で使われていた車は、営業車両など通常業務にも使われていた

    一方で、これらとは逆のケース、たとえば会社が維持費や修理代、ガソリン代を一切支払っていない場合、マイカー通勤を認めていない場合などは、会社には責任があると認められていない実例もあります。

    会社が責任を負う法的根拠

    人身事故と物損事故交通事故

    交通事故は、大別して人身事故と物損事故(交通事故証明書においては「物件事故」と標記されます)に分かれます。

    誰かが怪我を負った事故は人身事故、怪我がない(怪我はあったが届出をしなかった場合も含みます)の場合は物件事故といいます。

    会社が負う責任の分類

    会社が責任を負う法的な根拠は、運行共用者責任(自賠法3条)使用者責任(民法715条)に分かれます。

    運行共用者責任とは、怪我を負った方への損害賠償責任のことで、必ずしも運転者でなくても責任を負います。会社としては、従業員に運転させていたとしても、運行利益を得ている点で、その従業員が事故を起こして怪我を負わせた場合は損害賠償責任を負うのです。

    一方で、使用者責任とは、会社が従業員を使用(雇って働かせている)ことを理由とする責任です。そのため、使用者責任については、怪我だけでなく物損分についても損害賠償責任を負います。
    ただし、「使用」が責任を負う要件となるので、例えば従業員がプライベートなどで社用車を運転していた場合などは、会社は使用者責任を負うことはありません。

    会社が従業員に一部負担を求めるケースもある

    会社と従業員の負担割合はどうなるのか

    従業員が事故を起こした会社側としては、従業員の過失で事故が起こったということでその従業員個人にも責任を求めたいという考えになるでしょう。
    つまり、被害者の方に支払った損害賠償金の一部を従業員に負担させるということです。

    ケースで考えてみます。

    ケース

    従業員Aが社用車で交通事故を起こし、被害者Bが負傷。
    従業員Aが勤める会社CがAに代わり200万円を被害者Bに支払った。

    この場合、会社Aとしては、従業員Cに対して200万円の一部負担を求めることはできるのでしょうか。

    会社としては100%全額、つまり200万円の負担を求めることもあり得ます。
    しかし、その請求は原則として認められません。会社にも自動車利用の利益があるからです。

    そして具体的割合については、従業員にどの程度過失があったか、つまりどれだけ危険な運転をしていたのかによります。
    飲酒運転や赤信号無視などの場合は、従業員の過失が大きいため、相対的に会社の負担割合は軽くなります。

    一方で、従業員の過失がそれほどないのであれば、基本的には会社の負担割合の方が大きくなる傾向にあります。

    社用車の修理費は従業員が全額払うのか

    では、社用車で事故を起こした場合、その修理費は誰が支払うのでしょうか。

    車両保険を使用した場合は保険会社によりカバーされますが、保険料等の関係で保険を使用しない場合、事故を起こした従業員も負担することになります。
    その負担割合も、加害者として被害者に支払った賠償金の負担と同様、従業員がどのような運転をしていたのか、どの程度過失があるのかなどが考慮されることになります。

    マイカー通勤は労災が適用されるのか

    最後に労災の適用についても触れておきます。

    マイカー通勤であっても、通勤中の事故であれば通勤災害として労災が適用されます。
    しかし、マイカー通勤を禁止している場合、通勤ルートを外れた場所で発生した事故の場合などは、労災の適用はありません。

    会社としては、どのような状況で事故が発生したのか、どのようなルートで通勤しているのかを確認しておき、事故後速やかに事実確認することが重要です。

    まとめ

    以上のとおり、従業員が交通事故を起こした場合、社用車を利用している場合はもちろんのこと、マイカー通勤時に発生した交通事故においても、会社が損害賠償責任などの責任を問われるケースはあります。

    交通事故は偶発的なものです。事故は起こさないに越したことはないですが、重要なのは起こさないようにすることだけではなく、起こってしまった時にどのように対応するのかを準備しておくことです。

    社用車を保有している会社、従業員にマイカー通勤を薦めている(認めている)会社は、交通事故発生時にどのような対応をするのかのルールをあらかじめ策定しておきましょう。

    記事監修

    弁護士 渡邉貴士

    弁護士 渡邉貴士
    大阪弁護士会所属

    経歴:
    京都大学法学部卒業
    京都大学法科大学院修了

    趣味:
    プロ野球、温泉、音楽(ミスターチルドレンが好きです)

    実績:
    弁護士登録直後より交通事故案件に注力。中でもケガをした患者様の案件に特化しており、人身事故の相談件数は年間100件を超える。
    これまで整骨院や損保代理店での社内研修も多数実施して、連携をとって交通事故患者様のサポートを行う。