【主婦必見!】交通事故の休業損害・慰謝料の増額は意外とかんたん
最終更新日 2024年9月11日
交通事故の被害者の職業はサラリーマンや大学生やアルバイターなど状況は多様です。その中には主婦の方々も含まれます。
普段は家事に勤しんでいるのに、むち打ちで家事に支障が生じるのは困るので、多くの方々は休業損害や逸失利益の請求手続きを行っています。
もちろん慰謝料も請求するのですが、主婦の場合は少々特殊です。むち打ちで家事に支障が生じたとしても、減収分が100%支払われるとは限りません。
目次
主婦の交通事故の休業損害と入通院慰謝料
交通事故の後の手続きの流れ
主婦が交通事故に遭遇した時の手続きの流れは、2段階に渡ってお金を請求するのが一般的です。
交通事故で負傷した時は、病院で治療を受ける事になるでしょう。ある程度治療が進むと、病状も落ち着いてきます。これ以上治療を続けても良くならない状態は症状固定と呼ばれ、症状が固定されるまでは治療費と入通院の慰謝料と休業損害などの費用を請求します。それが1段階目です。
そして症状固定になった後に後遺症が残った場合、改めて後遺障害慰謝料と逸失利益というお金を請求します。詳細は後述しますが、後者の逸失利益は休業損害に近いものがあります。この際の請求手続きは、2段階目になる訳です。
主婦の交通事故の休業損害はどうなるのか
1段階目の治療費を請求する方法は、比較的シンプルです。病院から発行される領収書などは保管しておき、加害者側の保険会社に請求します。交通費も請求できます。
支払われる金額は、入通院期間に左右されます。入通院期間が長期化すれば、支払われる金額は高くなります。
主婦の休業損害は、少し複雑です。パート勤めをしているかどうかにより、金額が変わってくるからです。主婦は、必ずしも育児に専念しているとは限りません。パート勤めしながら家事に勤しんでいる兼業主婦の方々も多いです。
では専業主婦の休業損害はどうなるかと言うと、賃金センサスという数字が基準です。弁護士基準によると、令和元年度賃金センサスの日額は約10,630円です。家事も立派な職業と見なされるので、それぐらい支払われる訳です。
ちなみに自賠責基準では6,100円です。自賠責基準と比較すると2倍弱の差がありますので、主婦が休業損害を請求するなら、弁護士に相談するのがおすすめです。
ただしむち打ちなどの状況ですと、上記の10,630円が満額支払われるかどうかは微妙です。むち打ちは症状がだんだん良くなってきますから、事故発生から数ヶ月も経過すると、1万円未満になる事もあります。家事にどれぐらい影響が及んでいるかを基準に、金額決定されます。
それで兼業主婦の場合、休業損害について上記の10,630円が基準となるかは、パートの給料次第です。給料が1日12,000円などの金額であれば、休業損害も12,000円です。逆に、日給8,000円であれば、10,630円という事というように給料と賃金センサスによる基準額を比較して高い方の金額が適用されます。
主婦の交通事故の慰謝料はどれぐらいになるか
交通事故で主婦がむち打ちになった時の慰謝料目安
ところで2段階目の後遺障害慰謝料の請求ですが、その金額は等級に左右されます。交通事故による後遺症も多様で、かなり深刻な症状が残ってしまうケースもあれば、かすり傷程度で済む事もあります。
かすり傷程度なら良いですが、実際には後遺障害が残存するケースもあります。後遺障害が残存した場合は、入通院慰謝料とは別に後遺障害慰謝料を請求すます。その後遺障害慰謝料の金額は、それこそ後遺障害の症状次第なのです。
内臓破裂や腕切断などの深刻な症状になれば、後遺障害の等級も重いです。後遺症の等級には1級から14級まであり、数字が少ないほど重い等級です。1級ぐらいのレベルですと、支払われる慰謝料は非常に高額です。
むち打ちの場合は、少々微妙です。見た目だけでは判断が難しく、検査も行ってみないと分かりづらい症状だけに、後遺障害等級12級もしくは14級と判定される事が多いです。
弁護士基準による後遺障害慰謝料は、14級で110万円が目安であり、12級については290万円が目安です。
慰謝料に関して弁護士に相談する方が良い理由
1つ注意を要するのは、後遺障害慰謝料について「必ず」上記の110万円や290万円になるとは限りません。実際には、もっと低い金額になるケースもあります。
例えば加害者側の保険会社に、全ての手続きを任せた時です。いわゆる事前認定です。保険会社基準により後遺障害慰謝料が算定されるため金額が低額となる傾向があります
また慰謝料に関して自力で交渉するのは、あまりおすすめできません。相手側の保険会社は交渉に慣れていますから、不利な条件を提示されてしまうケースもあるため、自力で交渉するのは、とても大変です。
主婦の場合、やはり弁護士に依頼する方が良いでしょう。できれば事故直後などの早いタイミングに、弁護士に相談すべきです。
主婦の交通事故の逸失利益はどれぐらいか
主婦業の後遺障害逸失利益と年収の目安額
そして後遺障害逸失利益です。上記でも少々触れましたが、裁判所としては主婦業も立派な仕事であると見なしています。主婦業に関する年収目安額もあるのです。
という事は、交通事故に遭遇していなければ、主婦本人としては立派な仕事をしていた筈です。しかしむち打ちになってしまうと、家事などの主婦業も困難になるでしょう。
むち打ちにならなければ、主婦が家事を十分に行えるため家庭に対する利益が生じていたとも言えるのです。事故によって失われた利益は、逸失利益と呼ばれています。
では裁判所が主婦業の年収がどれぐらいと見なしているかというと、令和元年度賃金センサスでは約388万円です。この金額は毎年変更されます。パートをしている主婦の場合は、388万円を超えている事もあるでしょう。年収400万なら、それを基準に後遺障害逸失利益を算定します。
3つの数字を基準に交通事故の逸失利益を算定
後遺障害逸失利益を算定するためには、主婦の基礎収入である上記の388万円や400万円などの金額に対して、更に2つの数字を乗じる必要があります。労働能力損失率とライプニッツ係数です。
むち打ちの労働能力損失率は比較的明確で、後遺障害等級14級であれば5%になり、12級なら14%です。
ライプニッツ係数は、就労可能な年数に比例します
下記のように、就労可能年数が長ければ係数も大きくなるのです(法定利率を年3%とした場合のライプニッツ係数です)。
就労可能年数 | 係数 |
---|---|
15年 | 11.94 |
18年 | 13.75 |
33年 | 20.77 |
※ 小数第3位を四捨五入
ですので専業主婦の後遺障害逸失利益は、人それぞれ異なります。パート勤めでの収入が多ければ、後遺障害逸失利益の金額も高いです。しかし後遺障害の症状が比較的軽く、症状固定時点で高齢のため就労可能年数が少ないと見込まれれば、金額は低めになる傾向があります。
なお後遺障害逸失利益は、保険会社と争いになりやすいです。このように、主婦の後遺障害逸失利益の算定方法は複雑ですし、なかなか金額が決まらない事も多いので、弁護士に相談して手続きを進めると良いでしょう。
主婦が休業損害を含めた金額を増額するのは意外と簡単
主婦でも休業損害と、後遺障害が残存した場合は後遺障害逸失利益は請求できます。専業主婦の休業損害はどうなるかと言うと、自賠責基準では一日当たり6,100円。弁護士基準ですとと令和元年度賃金センサスを基準として日額約10,630円です。
裁判所としては、主婦も立派な仕事であると考えている訳です。主婦の休業損害や後遺障害逸失利益等を高めるポイントですが、やはり証拠が重要です。証拠不足では後遺障害について不適切な等級認定になりやすいですし、休業損害や慰謝料も安くなってしまう傾向があります。とは言うものの、主婦本人が自力で証拠を集めるのも大変です。
やはり交通事故に詳しい弁護士に相談して、請求していく方が良いでしょう。